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仏壇・仏具の選び方

仏壇の起源には諸説ありますが、今日言われるような伝統的な造りの仏壇が、一般家庭に普及したのは、江戸幕府のキリシタン宗門禁止政策が強行されたのがきっかけと言われています。当時、義務付けられた各地域の檀家の家族名簿を記入した「宗門人別改帳」が、各地に仏教の普及をもたらしたばかりでなく、各家に仏壇が存在していることが仏教徒である証しとともなって、民衆の中に仏壇の需要を急速に高める結果となりました。

 

仏壇とは、ご自分の信仰するお寺の本堂を小さくして、各家庭で仏さまをお祀りするものというのが一般的な考え方です。そのため、仏壇を新調しご自宅に納めた時には、手次寺(てつぎでら)のご住職さまにお願いして「お魂入れ」の儀式(地域宗派によって、開眼供養、お精入れ、お性入れ、おわたまし、とも言う)を行わなければなりません。 お魂入れをする際は、仏具を設えお寺さんをお招きし、お魂入れの読経をお願いします。「お魂ぬき」は、その逆で、お仏壇が古くなって、修理や引っ越しなどでご自宅から出す際に、お寺さんにお願いする儀式です。

 

このように、お仏壇とそこにお祀りする本尊や仏具は、信仰する宗派の教えや作法、お寺と深い関係があります。また、各地域によっても異なる場合がありますので、ご先祖さまの手次寺や、各地域の仏壇店様でお尋ね頂くことをおすすめします。

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  • 天台宗

    てんだいしゅう

    • 開祖は伝教大師最澄(767〜822)、総本山は比叡山延暦寺。平安末期から鎌倉時代にかけて開かれた多くの宗派の開祖も延暦寺で学んだため、日本仏教の母体とされる。経典は「法華経」。天台宗では、仏壇の祀り方に特に規定はなく、また、ご本尊も柔軟に考えており特定はしていない。阿弥陀如来、薬師如来、大日如来、観世音菩薩など、家の菩提寺の本尊様を祀るケースが多い。本尊の向かって右に天台大師、左に伝教大師のお姿をお祀りするのを通例としており、下の段にご先祖様の位牌を安置します。

    • ※1 左から花瓶、燭台、香炉、燭台、花瓶

      ※2 法事やお彼岸、お盆、お正月など、特別な日に掛けます

      ※3 一つの場合と二つの場合がある

      ※4 お位牌は、ご本尊や両脇掛より一段下の段におまつりします。たくさんある場合は古い霊位を向かって右に置きます。

  • 真言宗

    しんごんしゅう

    • 宗祖は弘法大師空海(774〜835)。真言宗は、空海が高野山金剛峰寺にて生涯を閉じた後、高野山金剛峰寺を本山とする高野山真言宗のほか、多くの門派に分かれながら発展しました。高野山真言宗の場合、ご本尊の大日如来を中央に祀り、向かって右側に宗祖弘法大師、左側に不動明王を祀ります。真言宗では、閼伽(あか)、塗香(ずこう)、華鬘(けまん)、焼香(しょうこう)、飲食(おんじき)、灯明(とうみょう)を六種供養と呼び重要視しており、閼伽は布施(ふせ)、塗香は持戒(じかい)、華鬘は忍辱(にんにく)、焼香は精進、飲食は禅定(ぜんじょう)、灯明は(智慧)を表すとしています。この六種を供養するため仏壇は、三具足、五具足をはじめ荘厳に飾られます。

    • ※1 左から花瓶、燭台、香炉、燭台、花瓶
      ※2 法事やお彼岸、お盆、お正月など、特別な日に掛けます
      ※3 一つの場合と二つの場合がある
      ※4 お位牌は、ご本尊や両脇掛より一段下の段におまつりします。たくさんある場合は古い霊位を向かって右に置きます。

  • 浄土宗

    じょうどしゅう

    • 宗祖は法然上人(1133〜1212)、総本山は知恩院。ご本尊は、本来は背に舟形の光背がついた阿弥陀如来の立像だが、座像や絵像、「南無阿弥陀仏」の掛軸でも良いとされています。ご本尊の両脇に、如来の随身として、右側に観世音菩薩、左側に勢至菩薩をお祀りしても良いとしています。本尊もしくは、その両菩薩の両側に、向かって右側に高祖善導大師、左に宗祖法然上人の掛軸又は木像をお祀りします。その下の段に、先祖の位牌を祀ります。位牌が一つであれば右側に、2つ以上の場合は古いものを上座の右側に置き、新しいものを左側に置き、位牌が多い場合は、繰り出し位牌を祀ることもあります。

    • ※1 左から花瓶、燭台、香炉、燭台、花瓶
      ※2 法事やお彼岸、お盆、お正月など、特別な日に掛けます
      ※3 一つの場合と二つの場合がある
      ※4 お位牌は、ご本尊や両脇掛より一段下の段におまつりします。たくさんある場合は古い霊位を向かって右に置きます。

  • 浄土真宗本願寺派(西派)

    じょうどしんしゅうほんがんじは

    • 開祖は親鸞聖人(1173〜1262)、西本願寺派の本山は京都の西本願寺。そのため「お西」と通称して呼ばれます。お仏壇は、金仏壇ですが、宮殿の造りが一重の破風屋根、金箔の外柱になっているのが特徴です。ご本尊は、阿弥陀如来の木像か絵像、もしくは六字名号(南無阿弥陀仏)を祀ります。向かって右側に十字名号(帰命尽十方無碍光如来)、左側に九字名号(南無不可思議光如来)をお掛けします。また向かって右に親鸞聖人、蓮如上人の御影をお祀りしても良い。浄土真宗の特徴として、仏壇に位牌を安置しません。法名は法名軸として、仏壇の左右の内壁につるしたり、過去帳に書き写し、仏壇内に安置します。

    • ※1 上卓の上、左から仏飯器、四具足(華瓶、火舎香炉、燭台、華瓶)、仏飯器
      ※2 三角打敷と下掛(法事やお彼岸、お盆、お正月など、特別な日に掛けます)
      ※3 和讃箱は、正信念仏偈と三帖和讃を納める箱。これと御文書箱は仏壇に備え付けておくものとされています
      ※4 真宗では原則として位牌ではなく、法名軸か過去帳に法名を記す。(真宗高田派を除く)

  • 真宗大谷派(東派)

    しんしゅうおおたには

    • 宗祖は親鸞聖人(1173〜1262)、大谷派の本山は京都の東本願寺で、通称して「お東」と呼ばれる。お仏壇は金仏壇で、宮殿の造りが二重の瓦屋根、黒漆塗りの外柱になっているのが特徴です。ご本尊は、阿弥陀如来の木像か絵像、もしくは六字名号(南無阿弥陀仏)を祀ります。向かって右側に十字名号(帰命尽十方無碍光如来)、左側に九字名号(南無不可思議光如来)をお掛けします。また向かって右に親鸞聖人、蓮如上人の御影をお祀りしても良い。浄土真宗の特徴として、仏壇に位牌を安置しません。法名は法名軸として、仏壇の左右の内壁につるしたり、過去帳に書き写し仏壇内に安置します。

    • ※1 華瓶卓上、左から華瓶、仏飯器、火舎香炉、仏飯器、華瓶
      ※2 三角打敷と下掛(法事やお彼岸、お盆、お正月など、特別な日に掛けます)
      ※3 和讃箱、御文箱に正信偈、三帖和讃、御文五帖を日常のおつとめ用として備えます。
      ※4 真宗では原則として位牌ではなく、法名軸か過去帳に法名を記す。(真宗高田派を除く)

  • 真宗高田派

    しんしゅうたかだは

    • 真宗十派の一派、三重県津市の専修寺を本山とするのが真宗高田派です。お仏壇は、金仏壇ですが宮殿に綸子模様の柱が立ち、ご本尊の前に唐戸、両脇には昇り龍と下り龍の彫刻が施された柱が立つなど、特徴があります。ご本尊が、阿弥陀如来の立像の場合、向かって右側に親鸞上人の絵像、左側に十字名号(帰命尽十方無碍光如来)と九字名号(南無不可思議光如来)が二行に書かれている合幅の軸をお掛けします。また、ご本尊が阿弥陀如来の絵像の場合は、向かって右側に十字名号(帰命尽十方無碍光如来)、左側に九字名号(南無不可思議光如来)の掛け軸を掛けます。高田派の仏具は、桐紋様の輪灯を用い、麟鳳亀龍(りんぽうきりゅう)と呼ばれる五具足をお飾りするなど、他の真宗系の門派と異なりますので、菩提寺や地域のお仏壇店に尋ねて頂くことをお薦めします。

    • ※1 華瓶には、水を入れ、樒(しきみ)などの青木をさす
      ※2 五具足(対の花瓶、対の燭台、飾り香炉)は、高田派用のものを飾る
      ※3 前香炉は前卓の上に置き、経机などには置かない。線香は適当な大きさに折り、火先を向かって左にして寝かせる。
      ※4 打敷は、報恩講や年忌法要の時など、重い法要時に三角形の角掛(すみがけ)とともに掛ける

  • 時宗

    じしゅう

    • 時宗の宗祖は一遍(1239〜1289)、総本山は清浄光寺。ご本尊は、舟形の光背のついた阿弥陀如来の木像か絵像をお祀りします。向かって右側に一遍上人、左側に真教上人を祀ります。

    • ※1 左から花瓶、燭台、香炉、燭台、花瓶
      ※2 法事やお彼岸、お盆、お正月など、特別な日に掛けます
      ※3 一つの場合と二つの場合がある
      ※4 お位牌は、ご本尊や両脇掛より一段下の段におまつりします。たくさんある場合は古い霊位を向かって右に置きます。

  • 融通念仏宗

    ゆうずうねんぶつしゅう

    • 融通念仏宗は、平安時代後期に宗祖の良忍(1072〜1132)によって成立、総本山は大念佛寺。ご本尊は、十一尊天得如来の絵像をお祀りします。向かって右側に良忍上人、左側に法明上人の絵像を祀ります。

    • ※1 左から花瓶、燭台、香炉、燭台、花瓶
      ※2 法事やお彼岸、お盆、お正月など、特別な日に掛けます
      ※3 一つの場合と二つの場合がある
      ※4 お位牌は、ご本尊や両脇掛より一段下の段におまつりします。たくさんある場合は古い霊位を向かって右に置きます。

  • 臨済宗

    りんざいしゅう

    • 臨済宗は、主要な14派を中心に多くの門派に分かれています。建仁寺派では臨済宗を最初に中国から日本に伝えた明庵栄西(1141〜1215)を開祖とし、臨済宗最大宗派の妙心寺派では、開山慧玄(1277〜1360)を開祖としています。一般的には、ご本尊は釈迦如来像を祀りますが、決まりではなく菩提寺の本尊や先祖代々祀ってきたご本尊でも良いとされています。向かって右側に、文殊菩薩か禅宗の初祖である達磨大師を祀り、左側に普賢菩薩か観世音菩薩、または臨済大師を祀ります。菩薩、大師によって位牌の配置も変わってきます。また、各派によっては、本山の開山の位牌や御影を祀ることもあります。各派によって仏壇の祀り方に違いがあるので、菩提寺に確認してお祀りすることをお薦めします。

    • ※1 左から花瓶、燭台、香炉、燭台、花瓶
      ※2 法事やお彼岸、お盆、お正月など、特別な日に掛けます
      ※3 一つの場合と二つの場合がある
      ※4 お位牌は、ご本尊や両脇掛より一段下の段におまつりします。たくさんある場合は古い霊位を向かって右に置きます。

  • 曹洞宗

    そうとうしゅう

    • 曹洞宗の宗祖は、承陽大師道元(1200〜1253)と常済大師瑩山(1268〜1325)、総本山は永平寺と総持寺。ご本尊は、釈迦牟尼仏坐像の木像か絵像を祀ります。三尊仏(一仏両祖)の御影を祀ると良いとしていますので、向かって右に高祖道元禅師、左に瑩山禅師を祀ります。

    • ※1 左から花瓶、燭台、香炉、燭台、花瓶
      ※2 法事やお彼岸、お盆、お正月など、特別な日に掛けます
      ※3 一つの場合と二つの場合がある
      ※4 お位牌は、ご本尊や両脇掛より一段下の段におまつりします。たくさんある場合は古い霊位を向かって右に置きます。

  • 日蓮宗

    にちれんしゅう

    • 日蓮宗の宗祖は、日蓮聖人(1222〜1282)、総本山は久遠寺。中央にはご本尊である、十界勧請の大曼荼羅か三宝尊を祀ります。三宝尊とは、中央に「南無妙法蓮華経」の題目、向かって右に多宝如来、左に釈迦如来の像を祀ったもので、その前に宗祖である日蓮聖人の坐像を安置します。三宝尊を祀る場合は、両脇右側に鬼子母神、左に大黒天の像や掛け軸を祀ることもあります。

    • ※1 冬の間は宗祖像(日蓮聖人)の頭も綿帽子を被せる
      ※2 打敷は法事やお彼岸、お盆、お正月など、特別な日に掛けます)
      ※3 お位牌は、ご本尊や両脇掛より一段下の段におまつりします。たくさんある場合は古い霊位を向かって右に置きます。

  • 上置仏壇

    • 住宅環境の変化に伴い、伝統的な金仏壇、唐木仏壇を省スペース化したものが上置仏壇になります。それぞれの宗派に合わせ、省略した祀り方が一般的です。